それでも愛してる

妻との出会いから、今日までを自分目線で綴ったブログです。

『マジで??』

月日が経つのは早いもので、サキと付き合ってから、一年以上になった。


わがままで、意地っ張りで、そのくせ泣き虫で‥‥。

寝相が悪いから、毎朝 髪が爆発している。。。


そんなサキの事が、俺は一瞬で好きになった。



ある日の事。

いつものように出社したら、いきなり部長に呼び出された。

応接室に入ると、そこには支店長と総務部長も居た。


「どうかしたんですか?」


「いや、単刀直入に話そう。実は福岡支店で例の案件の受注が決まってね。

あの案件に必要なノウハウを持っているのは、うちでも限られた人員しか居ない事は、君も知っていると思う。それでだ。君に7月から福岡に行ってはもらえないだろうかと思ってね。」

「面接時の君の希望では、福岡支店勤務が希望だったよね。どうだろうか。うちとしても、行ってもらえたら助かるんだよね。」


「本当ですか?ありがとうございます。是非、行かせていただきます。」


まさに「棚ぼた」の出来事だった。


確かに希望は出していた。


それが、こんなに早くに実現するとは思いもよらなかった。



その夜。

「お疲れ❗」


「お疲れ様~❗(^_^)/」


「今日はサキに報告があるんよ。」


「あたしも報告があるんよ。」


「こら!真似するんでない!(^w^)」

「実はな、来月から福岡に行く事になった。」


「えっ?! なになに、マジで?」


「うん。マジで。。」

「ようやく、お前の近くに行けるんよ。」


「ホントに?! ホントにホントなの?」


「ホントにホントなんよ。急な話やけど、今日、打診があってな。即答で決めた。」


ふと、携帯の向こうから、すすり泣く音がした。


「どした? 風邪でもひいたか。」


「違うょ~❗ もぅ、りくの馬鹿❗ 」

「嬉しくて泣いてるんだよ~❗」

「なんか夢みたい。まだピンと来ないけど、嬉しくて‥‥。」


「そかそか。 じゃあ、待ってるから、鼻チンしてきな!」


「うん!鼻チンしてくる。。」


「ついでに、オシッコも行ってきな!(^人^)」


「馬鹿❗今日は出ないもん❗(`ヘ´)」


彼女が鼻チンから戻って来た頃。


「サキの報告って何だったん?」


「うん。あたし、アルバイトする事にしたんだ。コンビニなんだけどね。週に2日だけ。」

「少しでも お金貯めたいんだ。」

「りく、ボルダリングの大会に出てるでしょ? あたし観に行くから。。その遠征費用。。(^_^;)」


「そかそか。(^w^)。じゃあ、格好悪いトコ 見せられないな。」


その夜は、こんな話をして互いに眠りについた。


翌日の彼女のブログには、


【もうすぐ、貴方が この街にやって来る。

1300km離れた街から貴方がやってくる。

これからは、貴方を もっと もっと近くに感じる事が出来る。これが夢でありませんように。。。】


彼女は、こんな記事を書いていた。


俺は、サキとの遠距離恋愛をスタートさせた頃、二人で歌っていた あの曲を思い出していた。



『指環と合鍵』 by ハジ→feat Ai



春の嵐(3)

あれから数日が過ぎた頃。


俺は、彼女が言った言葉の意味を ずっと考えていた。


『りくの事は、すごく大事。 でもね、好きかどうか、今は分からないんだ。』


(大事だけど好きかどうか分からない)


どういう事なんだろう。。。


こんな事を言われたのは生まれて初めてだった。



俺は悩みに悩んだ。

仕事も手につかないほど悩んだ。


そして、ある結論に辿り着いた。


ある日、

「俺、なんでこんなに悩んでるんやろ。」

「普通なら、こんな事言われたら、さっさと別れるよな。。」


そんな事を考えていたら。

「やっぱ、俺は どうしようもなく あいつの事が好きなんやなぁ~。」

と思えてきた。


そして俺が出した結論は、

(さきの事は待とう! 今は分からなくてもイイ。ただ、傍に居て欲しいのなら、傍に居てあげよう。わがままで意地っ張りな あいつを 包んであげられるような‥‥。そんな男になろう!)


そう決めた。


翌日の電話で、俺は こう あいつに伝えた。


「なぁ、さき。俺な、あれから色々考えたんよ。」


「‥‥。うん。。」


「でな、俺、さきの傍に居る事にした。」

「やっぱ、お前の事、めちゃめちゃ好きなんやなぁ~。って。」

「あらためて、そう思ったから。」

「だから、さきは これからも ずっと さきのままで良いから。。」


「俺は、お前の傍に居る❗」

「そう決めた❗」



電話の向こうで、彼女のすすり泣く声がしていた。


「りく。こんな思いさせてゴメンね。」

「あたし、嫌われたと思ってた。 ホントに ごめんなさい。」


「ううん。 そんなん気にせんでもええから。。」

「ほれ、鼻水出てるんやから、鼻チンしてきな!」


「うん。鼻チンしてくる。 ちょっと待っててね。」


そう言って、彼女は電話口を離れた。


「ただいま~❗」


「おかえり❗鼻チンしてきた?」


「うん❗鼻チンして、ついでに オシッコしてきた。(^w^)」


「あはは(^○^)。 それは言わんでも よろし。。」


「あはは(^○^)。だって 言いたかったんだもん。(^人^)」

「ねぇ、明日 お出掛けするんだ~。りくから貰ったサングラス かけてくね♪」


「おぉ~。そかそか。」

「あのデカサンかけると、なんちゃって芸能人みたいになるもんな。」


「うんうん。てか、なんちゃってって何よ~❗(`ヘ´)」


「明日、デカサンかけたトコの写メ送るね❗」


「うん。よろしく❗」

「ほな、そろそろ 寝る時間やぞ。 おやすみ~❗」


「うん❗おやすみ❗また明日ね~❗(^_^)/」



こうして俺らは、また普段と変わらない言葉を交わすようになっていた。


俺は、あいつの傍に居よう。

この先、どうなるかなんて誰にも分からない。

ただ1つ言える事は、

『おれは、あいつが好きだ』という事。


それだけで、少し前に進めそうな気がしていた。


春の嵐(2)

あれから、俺達は順調に新しい生活に向けて準備を進めて行った。


俺は、近くの不動産屋へ足蹴く通い、築浅の賃貸マンションを見つけ、彼女へ部屋の様子や近隣の風景を撮った写メを送りながら新居を決めた。


彼女は、引越し屋さんへの手配を済ませ、着々と荷造りに励んでいた。

転居届けを申し込む際に、最寄りの市役所で婚姻届ももらってきたらしく、嬉しそうに写メを送ってきた。



そんなある日の夜。

5月の連休も終わり、梅雨の便りが聞こえてきそうな頃。


「もうすぐだな。 荷造りは はかどってるん?」


「うん。。。」


「引越し日は、日曜日だから、次の日も休みを取ったんよ。」

「二人で荷物の片付けしような!」


「うん。。。」



「どした? 具合でも悪いんか?」



彼女は、しばらく無言で、何も話そうとはしない。


「どした? 何か言いたいことでもあるんやないか?」


「うん。。。」

「あのね。昨日、友達に引越しの話をしたんだ。」


「うん。」


「でね。あたし、びゃ~びゃ~泣いちゃった。」

「りく。あたし、友達と離れたくない。」

「この街は田舎だし不便な事が沢山あるけど、離れるんだ。って思ったら、この街が恋しくなっちゃって。。。」


「ごめん。今は、りくの傍に行けない。 てか、こんな気持ちのまま、りくの傍に行ったら りくに申し訳ないよ。」


突然の告白だった。


想定外の事で、頭が混乱し始めていた。


「そか。」

「じゃあ、延期にするか?」



「うん。」

「あのね、こんな事言うと りくに悪いのは分かってるんだけど。。。」

「あたし、色々考えてみたんだ。りくの事、自分の事、二人のこれからの事。。」


「そんでね。正直に言うと。あたし、りくが本当に好きなのかな?って思えてきて。。」


「りくは、裏表ない人だし、傍に居て すごく暖かい気持ちになるんだよね。」

「あたし、今まで生きてきて、こんなに大事に思われた事 1度もないから。。」


「でもね。正直な所、りくの事が好きなのか どうか分からないんだ。」



「‥‥‥‥‥‥。」


(こんな時、何て答えてあげたら良いのか。。)


すぐに言葉が思いつかなかった。


「りく。怒ってるよね。 そりゃそうだよね。 ごめん。嫌いになったよね。」



「そか。」

「分かった。婚約は白紙に戻そう。マンションもキャンセルしとく。」


「俺な、(好きかどうか分からない)なんて言われたの、人生初でな。」

「うまい言葉が見つからん。」


「少し考えさせてな。」


「うん。。。分かった。 ごめんなさい。」




そうして、その日は早々に会話を終えた。


俺は、頭が真っ白になって、放心状態のまま、次の日の朝を迎えることになった。