それでも愛してる

妻との出会いから、今日までを自分目線で綴ったブログです。

三日月の夜に‥‥。

10月。

彼女は予定どおり、俺の部屋へと引越してきた。


新しい住まい。

新しい家庭。

新しい家族。


俺達の新しいスタート。


沢山の荷物を片付けながら、俺は、心地よい疲労感に浸っていた。


ただ、そこには一人浮かない顔をした彼女が居た。


「どした? 疲れたん?」


「ううん。何でもない。」

そう言ったきり、彼女は虚ろな目で遠くを見つめていた。


そして一言。

「帰りたい‥‥。」

そう呟いた。


俺は失望した。

(新しいスタートの日に、何もそこまで言うとは‥‥。)


そして、二人の この先に未来は無いと直感した。


ある夜の事。


「なぁ。何で来たん? 」

「毎日そんな辛そうな顔してるくらいなら、越して来なくても良かったやん。」


「あたし、前に言ったよね。りくの事、好きかどうか分からないって。。」


「あぁ。言うたな。」

「でも、俺は、10月に来いとは言うてないやん。いつまでも待つって言うたやろ?」

「10月に来ることを決めたのはサキ自身やん。俺は、サキが今度こそ決心してくれたんだとばかり思うてたんや。」

「でも、それは俺の思い違いだったみたいやな。」


「‥‥‥‥‥‥。」


その夜は、お互い それっきりで眠りについた。


空の大きな三日月だけが俺達を見つめている様だった。

ふたつの引越し ~Two moving~(2)

飛行機は、定刻どおり福岡空港に到着した。


(ここが福岡かぁ~。)


「今、着いたよ。」

俺は到着ロビーの喫煙所で煙草を吸いながらサキにLINEを送った。


「お疲れ様~❗(^_^)/」

「とうとう来ちゃったね♪」


「あぁ。とうとう来たで!」


「あたし、もうホテルのロビーのトコに居るよ~❗」


「そか。早いなぁ~。(^w^)」

「急いで向かう❗」


「うん! 」

「りく。電車 乗り過ごさないでね!」

「りくは世界一【方向音痴】なんだからぁ~。」

「電車は西鉄だからね! に・し・て・つ❗」

「んで、天神ってトコで降りるんだかんね❗ 天神に着いたらLINE頂戴! あたし迎えに行くから。。」


「あぁ。わかっとるわぃ!」


実は、住む予定だった部屋のクリーニングが遅れていて、実際 部屋に住めるのは2日後との事だった。

それで、俺らは2泊3日でビジネルホテルに泊まる事にしていた。


********************


俺らは天神の地下街をブラブラして、少し早めの夕飯を済ませ、ホテルへと向かった。


その夜の事。


「ねぇ。あたし考えたんだけどね。10月になったら りくのトコに行くから。。」


「ん? 今 何て言った?」


「だからぁ~。10月になったら、りくのお嫁さんになるの~❗」


「はあぁ~?!」

「マジっすか。\(゜o゜;)/」


「うん♪」

「マジっすよ。(^w^)」


「なぁ。サキ。つい この前まで俺との結婚 迷ってたんやないの?」


「うん。迷ってたよ。でもね、こんなあたしの事、真正面から受け止めてくれたのって、りくだけなんだ。」


「あたしって。ブスだし、眼が細いし、身体も不恰好だし、胸も無いし、わがままだし、自分勝手だし、今まで真剣に生きた事無いんだ。」


「あぁ。そうだな。それに寝相も悪いし。」


「もぉ~~❗何~❗ そこは否定するでしょ、普通。。。(*`Д´)ノ!!!」


「あはは(^○^)。でもな、そんなブスを本気で好きになったのは俺や。文句あるか?」

「俺な、この子の手 一生 離さん❗って決めたんよ。」


「うん。ありがと。」

「りくの部屋って、ファミリータイプなんでしょ? だから、一緒に住んでも良い?」


「あぁ。良いよ。(^w^)」


「ありがと❗ イイお嫁さんになるからね❗(^_^)/」


そのかわり。。。

「浮気したら、ぶっ殺す❗」

「なんちって~❗💨💨💨」


「あはは(^○^)。するわけがないやろ。」

「アホやなぁ~。(^_^;)」


実は、急な異動だった事もあり、独身者用の社宅が空いていなかった。

そこで、急遽 ファミリータイプの部屋に住むことになっていた。


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急な出来事だった。


まさか、サキから そんな言葉が出るとは思いもよらなかった。


いよいよ、サキと一緒になれる。

そう思うと、身体中から嬉しさが込み上げてきた。




ふたつの引越し ~Two Moving~ (1)

七月。

いよいよ福岡へと向かう日が来た。

羽田発10:30分 ANA 249便 福岡空港行き。


俺は、サキの傍に行ける嬉しさと、これから待ち構えている難しいプロジェクトに対する心地よい緊張感を交錯させながら出発ロビーへと向かっていた。


前夜。

「ねぇ、りく。明日、ホントに来るんだよね。ホントにホントだよね。」


「ホントにホントや。 つうか、行ったらマズい事でもあるんか?」


「ううん。だってさ~。まだ夢を見てるみたいな感じなんだもん。」


「ホントに行くって。」

「前に言ったやろ? いつかきっと サキの傍に行く。サキを迎えに行く。ってな。」

「それが明日なんよ。そしてプロジェクトを軌道に乗せたら、サキを迎えに行くから。」


「うん。ありがと。」


「適当な事は言わんよ。俺は、その場しのぎに適当な事ばかりぬかす様な(クチだけ星人)じゃないからな。」


「うん。それは とっくに分かってる。りくは、そんな チィ~さい人じゃないもん。」


「分かってるなら、よろし。 ほら、明日も早いんだから、もう寝な~!おやすみ!」


「うん。おやすみなさ~い!また明日ね~!」


そんな会話をして、前夜、俺らは早々に眠りについた。


********************


「今から乗るよ。」


俺は、手短に彼女へLINEを送り機内へと入っていった。


「うん。らじゃあ~❗(^_^)/」

「気をつけてね~❗ 福岡に着いたら、LINEしてね❗」


「うん。らじゃあ~❗(^_^)/」


「ば~か! あたしの真似しなくてもイイじゃん!( ̄^ ̄)」




こんな他愛もない会話ばかりの毎日だった。


北海道と九州は、あまりにも距離がありすぎた。


そして、正直、まさか こうしてサキの傍に行く事になろうとは想像すらしていなかった。


俺とサキとは、俺が立ち上げたコミュのオーナーとメンバーさん。

最初は そういう関係だった。


飛行機は定刻どおり羽田空港を離陸した。


こうして俺は、東京をあとにした。


そして、福岡に着いた時、サキから思いもよらぬ言葉が飛び出す事は、この時、俺は未だ知る由もなかった。