それでも愛してる

妻との出会いから、今日までを自分目線で綴ったブログです。

春の嵐(2)

あれから、俺達は順調に新しい生活に向けて準備を進めて行った。


俺は、近くの不動産屋へ足蹴く通い、築浅の賃貸マンションを見つけ、彼女へ部屋の様子や近隣の風景を撮った写メを送りながら新居を決めた。


彼女は、引越し屋さんへの手配を済ませ、着々と荷造りに励んでいた。

転居届けを申し込む際に、最寄りの市役所で婚姻届ももらってきたらしく、嬉しそうに写メを送ってきた。



そんなある日の夜。

5月の連休も終わり、梅雨の便りが聞こえてきそうな頃。


「もうすぐだな。 荷造りは はかどってるん?」


「うん。。。」


「引越し日は、日曜日だから、次の日も休みを取ったんよ。」

「二人で荷物の片付けしような!」


「うん。。。」



「どした? 具合でも悪いんか?」



彼女は、しばらく無言で、何も話そうとはしない。


「どした? 何か言いたいことでもあるんやないか?」


「うん。。。」

「あのね。昨日、友達に引越しの話をしたんだ。」


「うん。」


「でね。あたし、びゃ~びゃ~泣いちゃった。」

「りく。あたし、友達と離れたくない。」

「この街は田舎だし不便な事が沢山あるけど、離れるんだ。って思ったら、この街が恋しくなっちゃって。。。」


「ごめん。今は、りくの傍に行けない。 てか、こんな気持ちのまま、りくの傍に行ったら りくに申し訳ないよ。」


突然の告白だった。


想定外の事で、頭が混乱し始めていた。


「そか。」

「じゃあ、延期にするか?」



「うん。」

「あのね、こんな事言うと りくに悪いのは分かってるんだけど。。。」

「あたし、色々考えてみたんだ。りくの事、自分の事、二人のこれからの事。。」


「そんでね。正直に言うと。あたし、りくが本当に好きなのかな?って思えてきて。。」


「りくは、裏表ない人だし、傍に居て すごく暖かい気持ちになるんだよね。」

「あたし、今まで生きてきて、こんなに大事に思われた事 1度もないから。。」


「でもね。正直な所、りくの事が好きなのか どうか分からないんだ。」



「‥‥‥‥‥‥。」


(こんな時、何て答えてあげたら良いのか。。)


すぐに言葉が思いつかなかった。


「りく。怒ってるよね。 そりゃそうだよね。 ごめん。嫌いになったよね。」



「そか。」

「分かった。婚約は白紙に戻そう。マンションもキャンセルしとく。」


「俺な、(好きかどうか分からない)なんて言われたの、人生初でな。」

「うまい言葉が見つからん。」


「少し考えさせてな。」


「うん。。。分かった。 ごめんなさい。」




そうして、その日は早々に会話を終えた。


俺は、頭が真っ白になって、放心状態のまま、次の日の朝を迎えることになった。

春の嵐(1)

年が明けて、街がいつもの日常に戻った頃、俺達は結婚に向けて動き出した。


俺は、都内の会社に再就職が決まり、埼玉へと移り住んでいた。



相変わらず、毎日の電話とLINE。


話す事といったら、その日の出来事や彼女の体調の事。


そして、新たに加わったのが結婚してからの住まいと、ささやかではあるが二人の将来の事。


「ねぇ、3月の下旬になったら、あたし そっちに行くから❗」


「ん?大丈夫なんか? 地震が怖いって言うてたやんか。 こっちは地震が多いで~。」


「ううん。大丈夫だよ。(^w^)」

「それに、住めば都って言うじゃん。」


「まぁ~な。3月かぁ~。もう少しだな。」


「うん!でも、路線が多いし、駅も大きいから電車に乗るのも大変かも。。」

「あたし、絶対に駅で迷子になりそう。。(^_^;)」


「そんなん、慣れるって。。」

「俺だって慣れたんやし。。」


「うん!だね♪」

「りくよりは、方向音痴じゃないからね。」


「ねぇ。広くなくても良いから、リビングは欲しいなぁ。」

「あたし、植木鉢が沢山あるから、出来ればベランダも欲しい。」


「あぁ。それならマンションにしよう。」


「うん❗マンションで決定~❗\(^_^)/」


「近いうち、休みの日でも不動産屋さん 当たってみるから。。」


「うん❗ あっ❗じゃあ、部屋の感じとか見たいから写メって送って❗」


「あぁ、そうする。」



「早く りくの傍に行きたいなぁ~。」

「あたし、りくのお嫁さんになるんだよね♪」

「楽しみにしてるからね~❗(^_^)/」



「あぁ、俺も楽しみだよ。」




こうして、俺達は新しいステージを迎える。

そう信じていた。

ごめんなさい。m(__)m

別れを告げられた翌日。


彼女からの『おはよう!』コールは無かった。

(やっぱ、終わったか‥‥‥。)


そんな事を思いながら、俺は会社に向かった。


いつもと同じ街並み。

いつもと同じ空気。


変わったのは俺ら二人。

あいつの声は、もう2度と聞けない。


モヤモヤした気持ちのまま、それでも俺は淡々と仕事をこなした。


お昼になって、俺の携帯が震えだした。

(あいつからだ❗)


画面を見ると、

「りく、お昼休み 少し時間取れる?」

とのメッセージ。


「俺の方から電話しようか?」


「ううん。あたしからかける。今、大丈夫?」


「あぁ、いいよ。」


数秒後、彼女から電話がかかってきた。


「もしも~し。どしたん?」


彼女は既に半泣きしている。


「んとね。。」


しばらく間が空いて


「りく。あたし、昨日ずっと考えてた。」

「りくの事、ずっと考えてね。」

「あたし、やっぱ りくじゃないとダメなの。。この先、あたしの中で りくが居ない人生なんて考えられないよ~。」


彼女は既に大泣きで、言葉が はっきり聞こえないほど泣きじゃくっていた。


「うんうん。」


俺は、ただ相づちを打って彼女の声に耳を傾けた。


「りく。。昨日は、ホントにごめんなさい。

もう一度 あたしとやり直せないかなぁ~。」

「もう、あたしの事なんか嫌いになった?」

「あたし、りくが好きなの。」

「こんなに大事に想われた事、1度も無くて‥。」

「昨日ね。つくづく そう思った。」

「りくじゃないと無理なんだって。。」



「やっぱ、ダメかなぁ~。」



「もう泣くな。」

「お前の他に誰が居るんよ。」

「また よろしくな❗」


「いいの?」

「ホントに あたしで良いの?」


「あぁ。もちろんや。」


「ホント?!」

「じゃあ、また電話しても良い?」

「いっぱいLINEしても良い?」


「当たり前やんか。」

「もう、いつもどおりの俺らや。文句ある人~!?」


「あはは(^○^)。いませ~ん!(^人^)」


「やっと笑ったな。(^w^)」


「ほな、そろそろ仕事の時間や。」

「またな❗(^_^)/」


「うん!お仕事 頑張ってね~!」

「またね~!」



こうして、俺達は、また いつもの二人に戻った。


だが、これから先に待ち受ける大きな壁の存在には、この時には未だ気づいていなかった。