ふたつの引越し ~Two Moving~ (1)
七月。
いよいよ福岡へと向かう日が来た。
羽田発10:30分 ANA 249便 福岡空港行き。
俺は、サキの傍に行ける嬉しさと、これから待ち構えている難しいプロジェクトに対する心地よい緊張感を交錯させながら出発ロビーへと向かっていた。
前夜。
「ねぇ、りく。明日、ホントに来るんだよね。ホントにホントだよね。」
「ホントにホントや。 つうか、行ったらマズい事でもあるんか?」
「ううん。だってさ~。まだ夢を見てるみたいな感じなんだもん。」
「ホントに行くって。」
「前に言ったやろ? いつかきっと サキの傍に行く。サキを迎えに行く。ってな。」
「それが明日なんよ。そしてプロジェクトを軌道に乗せたら、サキを迎えに行くから。」
「うん。ありがと。」
「適当な事は言わんよ。俺は、その場しのぎに適当な事ばかりぬかす様な(クチだけ星人)じゃないからな。」
「うん。それは とっくに分かってる。りくは、そんな チィ~さい人じゃないもん。」
「分かってるなら、よろし。 ほら、明日も早いんだから、もう寝な~!おやすみ!」
「うん。おやすみなさ~い!また明日ね~!」
そんな会話をして、前夜、俺らは早々に眠りについた。
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「今から乗るよ。」
俺は、手短に彼女へLINEを送り機内へと入っていった。
「うん。らじゃあ~❗(^_^)/」
「気をつけてね~❗ 福岡に着いたら、LINEしてね❗」
「うん。らじゃあ~❗(^_^)/」
「ば~か! あたしの真似しなくてもイイじゃん!( ̄^ ̄)」
こんな他愛もない会話ばかりの毎日だった。
北海道と九州は、あまりにも距離がありすぎた。
そして、正直、まさか こうしてサキの傍に行く事になろうとは想像すらしていなかった。
俺とサキとは、俺が立ち上げたコミュのオーナーとメンバーさん。
最初は そういう関係だった。
飛行機は定刻どおり羽田空港を離陸した。
こうして俺は、東京をあとにした。
そして、福岡に着いた時、サキから思いもよらぬ言葉が飛び出す事は、この時、俺は未だ知る由もなかった。